RPAとAIの違い
RPAの正式名称はRobotic Process Automationと言い、文字通りロボットで(Robotic)、業務を(Process)、自動化する(Automation)する技術です。人がパソコン上で行っている業務をロボットに行わせることができるようになります。
ただ、多くの人は「ロボット」、「自動化」と聞くと何となくAI(人工知能)を思い浮かべるかもしれません。実際、RPAとAIはどう違うのでしょうか。ここではRPAとAIの違いについて説明し、最後にRPAとAIが今度、どう組み合わさって発展していくかについてお話したいと思います。
→RPAについての簡単な概要はこちら1. RPAとは
RPAはパソコン上のオフィス作業を自動化するための技術です。RPAを使うにはあらかじめ人がRPAの行う作業を指示してあげる必要があり、RPAはその指示に従って動きます。逆に言うと、RPAは指示されたこと以外を行うことはできません。なので、RPAの得意な作業は一定のルールの下で決まったことを行う作業や毎日同じ時間帯に行うような作業など定型的で繰り返し行われる作業です。産業用ロボットのパソコン版と考えてもらうとわかりやすいかもしれません。工場にあるロボットはベルトコンベヤーで流れてきた部品を自動的に組み立てることができますが、それぞれのロボットにあらかじめ役割があり、規格の違う部品や工程の異なる部品が混ざってしまった場合、対応することができません。RPAも同様で、あらかじめ動作する内容は決まっており、予期していない場面に対応することはできず、例外的な対応に関してはあらかじめ人がRPAに命令を指示してあげる必要があります。RPAは人の身体で言うと手足のような存在であり、脳の役割をするものも別途必要になります。
2. AIとは
一方、AIの正式名称は「Artificial Intelligence」と言い、日本語だと「人工知能」と呼ばれます。AIは自分で判断することができるようになったシステムで、AIを作るには、判断力を磨くために大量のデータを集め、学習の機会を与える必要があります。更に、現在のAIはディープラーニング(深層学習)という技術が取り入れられており、AI自らが判断したデータの特徴を自動で抽出して、そこから更に学習を行い、精度を高めることができるようになっています。何年か前にGoogle傘下の企業が開発したAIの「AlphaGo」が碁の世界王者に勝ったことで話題になりましたが、これもこのディープラーニングという手法が取り入れられています。また、クラウド技術の発展により、個々の端末から収集したデータを効率的に学習できるようになったことも学習スピードを加速させています。とはいえ、ドラえもんとかターミネーターのように何でもかんでもできるわけではありません。将来的にはわかりませんが、現状は自動運転や顔認証に使われる画像認識、iPhoneの「Siri」などに使われる音声認識などあくまで何かに特化したAIが主流です。汎用的に見えるAIも複数のAIが組み合わされて汎用的に見えています。AIは人間で言うと、脳に該当します。具体的な作業を行うには別途プログラムを組んだり、RPAなどのツールを活用したりする必要があります。
3. RPAとAIの今後
このようにRPAとAIは機能に違いがあり、相性の良い組み合わせであると言えるでしょう。最近ではAIを搭載したRPAツールなども出始めてきています。これによって、今まで得意としていた単純作業だけでなく、複雑な業務もRPAで自動化することができるようになってきています。現在、紙に書かれている文字をパソコンに取り組む技術であるOCR(光学文字認識)の分野でAIとRPAが活用されています。具体的には、AIが紙ベースの文字を認識し、RPAがその結果を管理しているExcelファイルなどに転記するといったようなことがされています。以下は総務省によって紹介されているRPAとAIの統合具合によって自動化レベルを分類している例です。
クラス | 主な業務範囲 | 具体的な作業範囲や利用技術 |
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クラス1 RPA(Robotic Process Automation) | 定型業務の自動化 |
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クラス2 EPA(Enhanced Process Automation) | 一部非定型業務の自動化 |
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クラス3 CA(Cognitive Automation) | 高度な自律化 |
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- 「RPA(働き方改革:業務自動化による生産性向上)」(総務省)
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/02tsushin02_04000043.html
以上のように、RPAとAIは機能的に全く異なる役割を持っています。今後、技術が発展するにつれ、RPAとAIができることは益々増えていくことでしょう。将来的には、企業のほとんどの業務をRPAとAIによって自動化することができるようになる日も来るかもしれません。
執筆者プロフィール
伊藤 丈裕
(株)サムテックのシステムエンジニア。応用情報技術者資格保有。
27歳の時、営業から完全未経験で転職。開発とWebマーケティングを担当。得意言語はJavaとJavaScript。